カイとあたし
ヨシくんは優しかった
あたしの話を聞いてくれる
施設の話、女の子が嫌いな話、お母さんに会いたい話
「あたしが何かしたわけ?絶対お父さんが不倫したんだって。絶対。あたしのお母さんともう5年も会ってないんだよ?突然一人にされて、毎日会ってたお母さんと突然ぶっ切れたんだよ?あたしがんばってるくない?5年もだよ?5年もひとりだよ?お父さんは半年に一回来てたけど、もう会わないあたしがね。本当にさ、捨てられたって思いたくないわけ、わかる?この気持ち?イライラすんなぁもお」
たまに泣けてくるしイライラこんな話をずっとしてる間
うんうん、うんうん、辛いよなあほんと
ヨシくんは聞いてくれてた。ただあたしを見つめて。
施設外での時間は、ほとんどヨシくんと過ごした
なのに、どうしてヨシくんを抱きしめてあげなかったんだろう
抱きしめてあげたいと思わなかったのだろう
好きで好きで一緒に居たわけじゃない
ただ寂しくてイライラして、存在を認めてほしい
それを満たしてくれるのがヨシくんだけだった
ごめんねヨシくん
中3の3月、卒業式
表面だけの友人と離れられて大嫌いな先生にも会わなくていい
幸せしか感じてなかった
そして裏切り者のあたしは
卒業式に迎えに来てくれたヨシくんに
別れを切り出そうとおもった